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◆第7章:ベトナム・ホーチミンシティのスパ(2)





通りから奥まった場所に立っているヨーロッパ風の一軒家。
入り口のフランス調な門が開いていて、蔦が絡まっている。
石畳の通路を歩くと、左右に樹木が生い茂り、小さな空間でも自然が感じられた。ステキな空間だ。思わず、わーぉと言って、息を吐いた。急に女子力が上がって、立ち振舞いがおすましさんになってしまう。
階段を3段登って、目の前には白い外階段。左側の木製のドアを開けると、いい香りがした。まるで、たくさんの天然の樹木やフルーツやスパイスを、嗅覚の優れた調香師が丁寧により分けして、極上の香りを精製したような。
(うん、ごめん。要するにどんな香りかは忘れちゃったの。だって今これ書いてても、ニンニクの匂いしかしないんだもん。お隣さん今日餃子?11/5)

エステでは、先にカウンセリングシートのようなものを記入した。
日本語で質問が書いてあってすごく助かる。回答は名前をローマ字で。あとはチェックとか簡単なものばかり。

私は、一日たっぷり使う予定だったので、一番長いコースでお願いした。
メニューを見ると、スクラブ付のフットマッサージと、全身のマッサージと痩せる温熱マッサージ&デトックス。それで6時間。ランチ付。
あれ、こんだけ長いのに、お顔はやってくれないの?
えぇー。どうせバンコクでは顔しか見せないんだから、むしろ顔をやりたいよ。そっちのほうが重要だよ。と思って、ここに天然素材を使用したフェイシャルもオプションで付けた。7時間くらいだそうだ。
長いので、痩せる温熱とフェイシャルはランチの後にしましょう、という事になった。
いいよ、いいよ。遅くなっても。どうせ私、今、頭パッパラパーになってるからあんまり外を出歩いてる時間長いと危ないもん。ゆっても、終わるの夕方4時頃でしょ。大丈夫大丈夫。

で、まずはロッカーで裸になって、バスタオルを巻いて、すぐそこのサウナに入ってください、と言われた。いくらでも入ってていいですよーですって。
ロッカーの部屋には、他に白人の女の子2人組が居た。20代くらいかな。
女性同士なら、裸になるのに慣れている日本人の私。とっとと脱いで、バスタオル巻いて、まずはミストサウナへGO。

湯気で何も見えない。とりあえず足を恐る恐る伸ばし、指先を床に付けると、壁をつたって座る場所らしきところに座った。
座ったところで、ドアが開いていた分だけ蒸気が減って、視界が広がる。
4人でいっぱいになるような小さなサウナ空間。
あ、ドア閉めてなかった。ミストが逃げちゃったから見えるようになったのか。
急いで、中腰でドアのノブを引き、閉める。
シュワーッと、音が聞こえて、あたりが真っ白になっていった。気持ちいい。口を開いていると、ミストの蒸気が口の中から、鼻に抜けて行く。私、慢性鼻炎だから、こういうの大事なんですよ。
バスタオルをきちんと巻かずに入った私は、パラリとはだけた上半身だけ丸出しの状態で、ひたすら口を開けていた。
そこに、白人女性の2人が入ってきた時、少し笑われた気がする。
いいんですよ、日本人は裸慣れてるんですよ、温泉文化だから。こんなもんですよ、と思いながらも、一応、バスタオルは巻き直した。

しばらくすると、ここにずっといても、もったいない、と思って、カラっとしたサウナのほうへ移動。
隣の部屋だけど、広さは同じくらい。でもなんだか全然熱くない。
えー、これサウナっすか?と思ったら、石と、桶に入った水とひしゃくが置いてあった。
あぁ、これで水をかけるんですね。なんかTVとかで見た気がしますねー、とひしゃくで水をすくって、石にかける。
ジュッワーと音がして、パチパチ石の上で水が弾ける音がする。
あぁ、ちょっと熱くなったかな。座って待ってみた。
・・・・
・・・・
・・・・
いや、熱くない!ぬるいよ!ぬるい!
なんだよー、これもっとかけないとダメなの?
えい、えい、えい、えい、と4回くらいかけた。
ていうかですね・・・、

ひしゃくと桶のサイズが合ってないんだよ!
なんでこんなちっちゃい桶に、こんなデカいひしゃくなの?水すくいにくいんだけど!

しばらく待っても全然熱くならないので、諦めて出た。
もう、サウナはいい・・・。

さぁ、エステだエステ!
バスローブに着替えて、部屋を移動しようとする私が横目に見たものは、なんかおかしいな、という顔をして出てきた白人女性二人組。
やっぱり、あなた達もそうでしたか。

サウナ終わりましたー、と声をかけると、男性スタッフがこちらへどうぞ、と誘導してくれた。あ、男性居るんだ。ちょっとテキトーに結んでいたバスローブの紐を結び直した。

案内されて、階段を2回登り、三階へ。すごく広いお屋敷だ。
三階の通路を一番奥まで歩くと、左のドアを開いてくれた。
どうぞ、と案内された部屋は、ベルサイユ宮殿にあるようなゴシック調の一人がけの椅子が壁沿いに8個、ゆったりとした広さで整然と置いてあった。
もちろん、オットマン付で。脚は猫脚。ヴィロードの生地が美しい。
ゆったりと座れる広さと、隣同士のスペースも充分。まさにお嬢様のエステ空間だ。
良家のお嬢様が、休日に集い、お茶を飲みながら語り合い、オホホ、オホホと笑い声が聴こえそうな、そんな空間だった。
まぁ、私は嫌いじゃない。ゴシック調、バカンスだったらアリよ。

・・・・・でも、全部、真っピンクだな、おい!って感じ。ではある。

部屋の壁も椅子も全部、ピンク。いや、タオルとかは灰色とのストライプになっててオシャレなんだけど、それにしても、全部ピンクだったよ。

椅子に座ると、男性スタッフ(20代?)が、お茶を持ってきてくれた。
ティーソーサーに丁寧に乗せられたカップ。
渡されると、自然と立ち振舞いがお嬢様のように、しなやかになる。
カップの取っ手を持つ手も、自然とお嬢様風。丁寧な仕草が似合う女になろうとしちゃう。
自分の事を「あたし」とかじゃなくて、「わたくし」とか言いそうな感じ。

先に、お湯の入った入れ物に、足をつけて、丁寧に拭き取ってから、マッサージに入る。
あぁ、お嬢様みたい、私。肩の緊張がほぐれていく。
お茶を飲みながら、優雅な空間にうっとりしていると、男性が、ポケットから何かごそごそ出してきた。スクラブね。うふふふ。さぁ、どうぞ。

・・・・・て、これも真っピンクかよ!

ってなほど、どぎついピンクだった。
これ、天然?ホント天然?いや、天然素材使うのはフェイシャルだけか!

まぁ・・・・いいですわよ、ホホホホ。って引きつりながら、フットマッサージ終了。

続いて、別な部屋へ移動。
ここから全身マッサージですね。
さっきとは別な階段を1回降りると、別なスタッフの女性がいて、その人にバトンタッチした。そこから、通路を歩いてその先へ。
あー、もう全然どこにいるのか分かんない私。空間認識能力、低いんだよね。
ベトナム人女性(40代以上っぽい)らしきその方が、左手のドアを開けると、うす暗い空間の真ん中にエステ用のベッドがあった。
奥にはこれまた猫脚のお風呂。上からは、天蓋の白いレースが下がっている。
右側のアンティークなキャビネットの上には、キャンドルが焚いてある。
すごくいい匂いがした。思わず、ん~ナイススメール、って言っちゃったもの。

ベッドの準備が終わると、エステティシャンのその女性が、それでは、脱いでください。みたいなジェスチャー。
あ、え、これ脱いだら紙パンツいっちょなんですけど。
バスタオルとかで隠してくれないの?
「ここで?」「この場で?」って聞いちゃったもんね。
「うん。」的なリアクションをする彼女。
あ、そう。えー・・・まぁ、いいや、はい。
って、バスローブを脱いで紙パンツだけで立ちすくむ私。恥ずかしー。
あ、女子力上がってきてるからかしら。オホホホ。

彼女が、
「では、ここに寝てください。」
というようなジェスチャーをするので、そそくさとベッドに下向きになった。

全身のマッサージ、スクラブで更にマッサージをした。
終わると、まずはシャワーを浴びてきてという。全然英語が聞き取れないが、ジェスチャーでなんとか理解できる。

シャワーを浴びると、もう、時間の感覚が分からなくなっているのに気付いた。
マッサージ、気持ちよかったからだね~。

シャワールームから出ると、また、はい寝てくださいと案内され、従ってベッドへうつ伏せになった。
今度はベッドが温かい。そして、またマッサージが始まったんだけど、これが痛い!
脂肪をこれでもかと揉みほぐし、いてて、いててってなりながら、我慢する。
これが痩せるのだー、でもいた~い!頑張れわたしー、でもいた~い!
たぶん30分以上は我慢していた。
途中で、ベッドの温かさが、だんだん冷めてきてたんだけど、それどころでは無かった。

やっと終わると、今度は、「ここに立って、手を横に広げてくれ」というジェスチャー。
もー、恥ずかしいなぁ、これ、と思っていたら、なんかデカいラップ出してきた。
両腕、両足、お腹周りはアンダーバストからヒップまで全部を、ぐるぐる巻きにされた。
想像してみてよ、紙パンツいっちょの裸の状態で大の字の格好して全身ラップでぐるぐる巻きだよ?しかも何度も巻くから超硬いの。
そんなラップミイラ状態の、関節曲がらないヘンテコな格好で、ベッドに上むいて寝っ転がったんですよ。
そしたら、ベッドの上、温熱マットだったんだね、今まで気付かなかったんだけど。
エステティシャンが、温熱マットの、ベッドからはみ出している部分を、毛布のように私の上にかけた。

さぁ、これで、しばらく寝ていてください、という。
お水を後で持ってきますから、と。
あ、はい。でもマットあんまり熱くないけど、いいんですか、と思ったけど、言えなかった。熱さの基準が分からなくなって。

15分くらいは、そのままだったと思う。
いや、やっぱ、熱くないよ!全然汗かかないし!
エ、エクスキューズミー・・・って声をかけるも誰も来ない。
ラップ人間だから動けないし。
えー、どうしよ、どうしよ、と思っていたら、エステティシャン、やっと来た。水持って。

「ウォーター」

と言って、グラスについだ水にストローがさしてあるのを差し出した。
私、動けないから首だけあげて飲む。かっこわりー。
で、私から切り出した。

「Excuse me, this mat is not hot.」(すみません、このマット熱くないです)

彼女、え?みたいなリアクション。
いや、だから「mat is not hot.」分かる?「It’s not hot.」
分かるまで何度か、「ノットホット」又は「ノーホット」と言い続けたと思う。
そしたら、彼女、やっと分かったのか、マットと私の背中の間に手を入れた。
そして、電源のあたりをなんかカチカチやってる。
もう一回背中のあたりを触る。

「アー、オーケー」

と言うと、また、後で水持ってくるから待っててねー、的な事を言う。

あ、今度こそ大丈夫ね?と思って「OK,OK」って言ったら彼女は出ていった。

そして5分くらいでしょうか。

全然熱くない!!

もー、やっぱり全然熱くないのよ。ダメだこりゃ。
もう、結構大きな声で「ヘーイ、エクスキューズミー」って言った。

そしたら彼女やってきた。私、

「It’s not hot yet. I have no swet.」(やっぱ熱くないわ、汗出ないし)

とか言ったと思う。何度もマットを触っては、電源のところカチカチやってるから、業を煮やした私は、

「あー、Japanese staff Please」(日本人スタッフお願いします)

とか言った。だんだん英語ヘタになってるな、私。最初の彼女、日本人じゃねーし。

エステティシャンは、一度出ていった。そして、最初の美人の彼女を連れてきた。
あ、そもそも、この温熱マットのやつって、ランチの後じゃなかった??

美人の彼女に、日本語で伝える。

「あのー、マットが熱くないんですよ。」
「えー、ホントですか?」

疑ってるというよりも、なんか白々しい。

「いや、ホントに。だって私汗かいてないでしょう?ほらおでこのとこ。」

ラップ人間だから、おでこが触れず、目配せをした。
彼女はおでこを触って、あー、そうですか?どうかしら。といった感じだった。

「いや、ホントに。マットも全然熱くないんですよ。」

と、私が言うと、彼女がいきなり、エステティシャンにキレだした。

「★◇★■☆◇☆!!!!」
「■☆◇☆◇★■◇★■!!!」

急に、私を挟んで、ベッドの上で、ケンカしだした二人。
何言ってるか、全然分かんないけど、とにかく言い争っている。

私の寝ているベッドの両側で、右手にエステティシャン、左手に美人の彼女。
私、裸にラップでぐるぐる巻きin温熱シート。
両サイドで、とにかくけたたましく言い争ってるんですわ。

「★◇★■☆◇☆!!!!」
「■☆◇☆◇★■◇★■!!!」

これ、何なんだ、この光景は。ベトナムのホーチミンまで来て、なんだこの景色は。
なんでこんなラップにぐるぐる巻きで、女のケンカを見ないといけないんだ私。
えーと、私は何しに来てるんだっけ?ここはエステだよね?
とか、色々考えていたら、自分のラップ姿が笑えてきてしまって、

「プッ」

って、笑ってしまった。
アハハハハー、って笑ってくれるかな?と思ったら、美人の彼女、こっちむいて、

「先にランチにしましょうか。」

って、「仕方ないわね」って顔で。
いやいやいやいや、今ごまかしたでしょ!
何があったのよ!説明しないの???

そんなこんなで、美人の彼女退室。たぶん怒られたのであろうエステティシャンの彼女は、微妙な営業スマイルで、私に、一回これ取りますよー、的な事を言った。

その後が怖かったね。
エステティシャンの彼女がね、ハサミ持って、めっちゃ怒った顔で、ラップを切ってくるわけですよ。
いやいやいや、その顔で、ハサミ持って切らないで!って思った。
太もものあたりとか、ブっ刺されたらどうしようかと思って、超ドキドキした。
今回、ラップを切って外すまでのこの時間が一番長かったです。

その後、ランチに向かう時に、案内してくれた美人の彼女。
黙っていたので、私は、気を使って言った。

「まぁ、電化製品のトラブルだったら仕方ないですよねー。Erectric trableですよねー。しょうがない、しょうがない。」

・・・・あれ、なんで何も言わないの。

ランチは、サラダとかぼちゃのスープと生春巻き。デザートはフルーツを選んだ。
うーん、以前なら絶対にプリンのほうを選んでいたハズなのに。
私、以前は、こんな、美人が食べるような物ばかり食べてなかったって・・・。
生春巻きは4本あったけど、3本しか食べられなかった。頑張って食べたほう。

なんで、私こんなに食欲無くなっちゃったの・・・。

その後、ランチ終わりましたーって、最初にカウンセリングをしたフロアで待ってたんだけど、「お待ちくださいねー」って言われて、たぶん15分以上待たされたから、これたぶん、他の人が温熱シート使ってんだな、って思った。
一応、気を使って、美人の彼女に

「あのー、温熱、最後でもいいですよ。」

って言ったら、ふー、ってため息ついて、

「そうしましょうか。」

って。えぇ?そこは、「ありがとう」か、「ごめんなさい」じゃないの?
って、後から思ったけど、その時も含め、何も言わなかったよ。大人になったな、私。

まぁ、その後のフェイシャルは、キュッポンキュッポンやって、なんかえらくスベスベのツルツルになるやつを塗ってくれたし、またラップ人間になったけど、今度は上手に巻かれるようになれたし、まぁ、良かったよ。だって7時間18,000円だったから。


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プロフィール

森川愛(あいぷり)

Author:森川愛(あいぷり)
2000年にデビューした作詞作曲家、歌手です。
現在は小説を執筆中です。(映画化する為に奔走中です)
得意な事は、歌、司会、前世占い、
ライティング、インターネット通販、アフィリエイト広告コンサル、会社経営、
周りを元気にする事など。

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