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◆第14章:手紙(2)





「Plus in Plus out(プラスイン プラスアウト)」ってのがあるんだよ。
プラスはプラスを呼ぶし、マイナスはマイナスを呼ぶってのがね。
前向きな気持ちでいればいいんだよ。あなたもっと明るい人だったじゃん!
そんなのあなたらしくないじゃない。あなた、「いつも元気な愛ちゃん」だったでしょ?
だからそんな言い訳しないで、もっと竪山さんらしくなってよ!」

そうだった・・・。
私、本当はもっと明るくて元気で楽しい人だよね。
何かにグッと背中を押されたような感じがした。

「そうだね!私らしくないよね!」
「そうそう!」
「よし、じゃぁ歌います!ありのままで~」
「いよっ!!」

パチパチパチパチ!彼がノリのいい拍手をした。さすが元営業。才能あるなと思った。

この後、お店の女の子が、キロロの「長い間」を、私に歌わせたりして、すごい上手に歌えてしまった。まさか不倫してるとか思われてないよね・・・?。
彼とはそもそも今まで3回くらいしか会ってないのに。
もっと言うと、高校の時、手も握ってないし。キスだけして去ってたんですよ、彼は。

あ、ちょっと思い出した。あの時、「手も握ってないのに、キスなんか出来るか!」って言って怒られたんだっけ、私。
でも、彼が怒ってるから、私、悲しくて泣いちゃった。「なんで怒ってるの?私の事嫌いなの?」って言ってる私に、彼はキスしたんだった。

色々歌いながら、話もたくさんした。
家族の事や、生い立ちのような事や、人生観や色々。
彼の性格には、たぶんに彼のお父さんの姿勢というか教育というか、そういったものがとても影響を与えているな、と感じたんだ。

九州男児らしい、不器用で無骨で、男らしい感じとか。女性をあごで使うような、一家の大黒柱としての威厳や尊厳を損なわないような立ち振る舞いとか、そういった感じのお父さんなのかな、というのは想像出来た。
彼は父親はとても厳しい人なんだ、と言った。

あれ、あのメッセージはお父さんからだったの?どうなのかな?
って思ったその瞬間に、私は、あ、今渡さないと、と直感が働いたので、彼の話を止めて、言った。

「あ、そこで、さっき言っていた手紙なんだけどね。」
「あ、うん。」

「私、魂の声とかそういうの分かるって言ったじゃない?」
「うん。???」
「まぁ信じられないかもしれないけど聞いて。私ある方から魂のメッセージを受け取りました。」
「はぁ。」
「ずっと眠れなかった理由は、コレって事を伝えたかったの。さっきなんか言う事間違っちゃったけど、恋心とかではなくて。このメッセージをね、あなたに届ける為に私ずっと考えていたみたい。」
「はぁ。」
「まぁ、信じてよ。」


「あなたの身内で誰か、この事を心から願っている人が居ませんか?」


そう言って、バッグから1枚の紙を取り出した。昨日の朝、書いたメッセージ。
----------------------------------------------
・もっと素直になりなさい

・海外は危ないから気をつけて

・うまくいかない時はいつでも帰っておいで(意地をはらずに)
----------------------------------------------


ここに、私は、
「あ、これ違うんだった。」と、今朝、気付いた答えを書き直した。
----------------------------------------------
・もっと素直になりなさい

・海外は危ないから気をつけて

 辛くなったら無理せずに
うまくいかない時はいつでも帰っておいで(意地をはらずに)
----------------------------------------------



彼、泣いた。
目に涙を溜めて、上を向いていた。

「誰だか分かるでしょう?」

「母親だ」

そういうと、彼は、今までの思いが全て溢れたような、そんな涙を流した。
スーッと鼻で大きく息を吸ってから、ハーとため息を吐いた彼が言った。

「信じるよ」

私は、安堵の表情で、

「良かった。」

と答えた。

「これが、昨日、メッセンジャーで、お母さんすごいねって言っていた理由。
 あなたのお母さんの強い想いがね、
 社内報のカメラマンにKonamiさんを撮影させ、
 主人がそれを見て、私に話をして、
 私とKonamiさんを結びつけ、
 あなたのところに、私を送り込んだの。
 たぶん、私の言う事だったら、あなたがちゃんと聞くと思ったんじゃないかな。」

その後、私は彼とお母さんの関係について話を聞いた。

関東の大学に行く時も、バンコクに行く時も、タイで出来た彼女が居ると話をした時も、お母さんにすごく反対されて大ゲンカした事。
彼は、自分が鹿児島の片田舎でのんびり過ごすだけで収まるような小さな人間では無いって事を散々説明したのに、お母さんは分かってくれなかった事。
連絡を取る度に、彼は自分がいかに頑張ってやっていけているか、立派になっているか、だから大丈夫だと、話をしているのに、お母さんはいつも心配をして、帰っておいで、と言う。
そんな母親に苛立ちを覚えて、またケンカをする。
その繰り返し。

私、お母さんの気持ちが分かるよ。
お母さんはただ、側に居て欲しかっただけ。
自分の理解出来ないような、別な世界に行って欲しく無かっただけ。
遠く離れた地で暮らす我が子に対して、不安をいつも抱えていて、出来れば目の届くところにいて欲しいと願っていただけ。

今は、彼がここまで立派になった事を理解して、少しずつ受け入れている事。
でも、まだそのお母さんの気持ちが理解出来ていない彼に対して、今回、私に魂のメッセージを送った事。私は、偶然そのメッセージを受け取っただけだとは思うけど。
いや、これは必然なのかも知れないし、運命なのかも知れない。

「お母さん、あなたの事を本当に愛してるのね。」

私がそう言った後、やっと、彼の心が何か殻を割って、開くのを感じた。
その日、私は、彼と話しながら何度か伝えていた言葉があった。

Open your mind. (心を開いて)

この時、やっと出来たんじゃない?


『強い想いはね、世界を動かすの。』



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プロフィール

森川愛(あいぷり)

Author:森川愛(あいぷり)
2000年にデビューした作詞作曲家、歌手です。
現在は小説を執筆中です。(映画化する為に奔走中です)
得意な事は、歌、司会、前世占い、
ライティング、インターネット通販、アフィリエイト広告コンサル、会社経営、
周りを元気にする事など。

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