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◆第16章:初めてのデート(2)





「あ、そう、なんで?」

私、思い込んでた自分が恥ずかしいから、あまり触れたくなくて聞き流してたけど。

「高校を卒業した年月日を入れて確定ボタン押さないといけなかったみたいで、それやってないと中退になっちゃうみたいだね」
「あ、そうなんだ。(心の声:どうでもいー)」
「こっちって、SNSが名刺代わりになってるから、学歴とか結構ちゃんと書いとかないとまずいんだよね」
「え、そうなの??ちょっとびっくりした。日本じゃわざわざそこまで見る人居ないよね。」
「タイ人だとバンコク内とそれ以外の出身かどうかでバカにされるからね」
「バンコク以外だと差別されるって事?」
「そう。だから外の地域からバンコクの大学に入ってる人は、高校の経歴、書かない人多いよ。大学からしか登録してない。」
「そうなんだ、そんな差別がまだあるんだね・・・。」

ちょっと心が痛かった。世界中にはまだまだ、出身地だけで人を差別するような国があるのか。
私は怒りにも似た感情と共に話した。

「SNSってなんかめんどくさくなっちゃってさー。」
「でもタイはSNS使ってる人すごく多いよ、だからマーケティングにも大事。名刺代わりだよね。」
「それは分かるけどさ、なんか他の人の投稿見て、あーはい頑張ってますねー、とか、わーうまくいってていいですねー、とか人の自慢ばっか見るのが疲れた。」
「まぁ、こっちでは、結構みんなほとんどやってるからね。日本だと友達そんなにやってないでしょ。」
「そうなんだよね、LINEのシェアが90%以上だったかな、facebookは全然50%以下だったと思う。感覚としてもママ友10人中2人か3人くらいだもんね。」
「だから、なんか、昔の学校の同級生とかあんまり見つからないよね。」
「あー、そうかもね。」

探した事無いから分からない私。学生時代は私の中で黒歴史だもん。

「こっちはちょっと名刺代わりなところあるから、経歴とかちゃんと書いておくの大事なんだよね。ビジネス相手の事もSNSで調べれば、その人のことが結構分かるじゃん?」
「まあねぇ。」
「何してるのかとか、どんな嗜好の人なのかとかさ。俺はプライベートばっかりアップしてるけど。」
「そうそう。なんかアップする内容もさ、ビジネス的に、[仕事でこんな事してます]とかそれしかしない人もいるじゃん?」
「俺の知り合いがそうだな。仕事の事だけ、毎日、朝・昼・晩、定期的にアップしてる。」
「へー、大変そー。」
「まぁ、それが会社をちゃんとやってますっていう証明になってるんだよね。」
「あー、そういう事ね。続けないといけなくなるのは大変だなぁ。やっぱ、めんどくさ!」
「まぁ、朝昼晩、食べたものばっかりをアップしてるおっさんもいるけどね。ちょっと年配の人とかに多いよ。」

(でも、私の知り合いの30代男性、食べ物の投稿のみに特化しててそれはすごく面白いけどなー。同じ内容でも、ユーモアがあれば随分印象違うのかもね。)

「あと、マイナスな事ばっかり書いてる人もたまーにいるよね。」
「あー、いるかもね。私の周りはあんまり居ないけど。」
「まぁ、そういうのはちょっとね。」
「でも、ポジティブ投稿ばっかりなのもうざいよ。はいはい、あなたは成功してますね、良かったですねー、ってなっちゃって。」
「そう?」
「私、もう、そのポジティブ祭りに耐えられなくて機種変更してアプリ入れてないもん。
スマホのホームとかに入れてあると、ふとした時に、なんとなくタップして眺めちゃうから時間の無駄だしさー。」
「あー、まぁそれはあるね。」

私、ちょっとふてくされた感情で言ったと思う。要するにSNSがイヤなんだ。
周りの成功を眺めるばかりで、自分が何も出来ていないような気持ちになる。
別に何もしてないワケでは無いのに、日々忙しく毎日のタスクをこなして一生懸命生きているのに、なぜか、「それだけではダメだ」と言われているような気分になるんだ。

何でよ!いいじゃん!子供3人いて、仕事して、家事もたまにやって、立派じゃないの?これ以上、私に何をやれって言うのよ!とね。
だからSNSが嫌い。
でも、彼と会えたのはSNSのおかげ。くそう。なんか悔しいけど・・・感謝。

車の中では、他にも色んな話をした。
タイのタクシーがほんといい加減で物騒な事とか。
一度、事故を起こして大変だった話とか。

その話を聞いた瞬間に、あ、今日伝えようと思ってた事、今言おう、と思った。

「ねぇ、本当に真面目に聞いてね。」
「何?」
「事故とか、事件にだけは絶対に気をつけてよ。」
「分かってるよ、前に事故起こした時に、ホントヤベーって思ったもん。」
「ん、ちょっと分かってないな。昨日のお母さんのメッセージの2番目にもあったでしょ。」
「うん。」
「私もすごく心配してるの。あなた本当に気をつけないと、事故とか事件に巻き込まれたりするかも知れないから。」
「・・・。」
「だから、危ないと思ったら・・・逃げて。身の危険を感じたら、命を最優先にして、すぐにその場から去って。私、あなたのお葬式になんか出たくないから。」

私、分かって貰えるように、彼の目を見つめて、膝の上に手を置きながら、真剣に言った。

「分かった。」

彼は真剣な表情でうなずいた。私は、やっと分かってくれた、と思った。

窓の外を見ると、高さの高い建物が少なくなって、景色が段々と開けてきた。
彼がタクシーの運転手に、タイ語で場所の説明をする。

「俺、まだ場所変わってから来たことないから、分かんないんだ。そっち側見ててくれる?」
「あ、えーと、釣り堀の看板を?」

主語が無いと、何を指しているのかがよく分からない。
この時は、私、ちゃんと推測出来たと思う。

後部座席の右側に座っていた私は、窓の外を一生懸命見た。
すると彼が、

「あ、あったあった」

と、運転手にタイ語で言い直し、タクシーを止めて、お金を払って出た。
ホント頼りになるなぁ。

少し通り過ぎていたので、10m程、来た道を戻る。
彼は、「暑いね」と言っていたけど、私には心地良い暑さだった。初夏のように。

右側を見ると、「えび」とひらがなで書いた看板が。
釣りをしている少年のイラストがレトロでちょっと面白い。タイ語っぽい文字とローマ字でもエビって書いてあった。

頭上に掲げてあるエビの釣り堀の看板を抜けると、左手には10人くらいが余裕で並べるような長さのカウンターがあって、その中に冷蔵庫が並んでいる。
周りは柱と屋根だけになっていて、雰囲気としては日本のビヤホールのような、納涼祭のような感じ。
蒸し暑いくらいの気温の中で、扇風機の音だけが響いている。
何か虫が鳴く声も聴こえた。日本の夏と変わらない印象。

竹で編んだ、背もたれ付きの四角い椅子としっかりした造りのテーブルが整然と並び、
真ん中にどーんとでっかい長方形の石造りの生け簀がある。

ここにエビがいるんですって!テンションが上がる。

どれどれ、と覗くと、いるいる。
結構大きなハサミのついたエビ。手長エビ?しかもたくさんいる。
どれだけかって例えると、生け簀の端から端までを、ざーっと洗面器ですくおうとしたら、3mくらいのところで、既にたくさんすくいすぎてこぼれちゃうくらい。

エビ


まずは、ビールでも飲んでからにしましょうか、と席について、ビールを注文。タイっていったらやっぱりシンハービールだよね。

タイのビールは、ビールジョッキに氷を入れて注ぐようだ。
気温が暑いから、ビールがヌルくなるのを遅らせるのと、氷を入れる前提でビールのアルコール度数が高めなんだって。
でも、私、昔からお腹が弱いし、知覚過敏だから、冷たい飲み物が嫌い。
ビールは氷を少なめに2個だけとかにした。

で、何か食べる?と聞かれたけど、まだ食欲がそんなに無い私は、好きなものを自分の分だけどうぞ、私は釣りたてのエビをたらふく食べますので、と言った。

彼はタイ語で何かを注文した。
ほどなくして、エビのすり身のフライが出てきた。ごくり。揚げ物好きなんだってば、本当は。

やっぱ1個ちょーだーい、と貰って食べる。
んんんんー、美味しいじゃん!エビが揚げてあるんですよ?そこにスイートチリソースですよ?私、辛いものも大好き。
もう、私の好きな物オンパレードじゃん。

彼は、エビ釣りの何かをタイ語で確認していた。
どうやら、1人当たりの釣れるエビの重さが決まっているらしい。
彼は計算して、まあ全部で12匹くらいまでだね、と言った。
充分でしょ。

ひとまず、エビを釣るのは後にして、すり身のフライを食べながら、まったりとビールを飲む。
暑いせいか、ビールが進む。
彼は、「暑いね」と何度も言って、しきりに汗を拭いていた。
私には、ちょうど良い暑さで心地よかったんだけど。

ビール何杯目を飲んだ頃だろうか。
彼が言った。

「そういえば、現地の視察って何?」

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プロフィール

森川愛(あいぷり)

Author:森川愛(あいぷり)
2000年にデビューした作詞作曲家、歌手です。
現在は小説を執筆中です。(映画化する為に奔走中です)
得意な事は、歌、司会、前世占い、
ライティング、インターネット通販、アフィリエイト広告コンサル、会社経営、
周りを元気にする事など。

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